2020.11.5
散歩
lapis文庫吸い込まれそうなほど空が高い。
窓を開けても、閉めても良い心地よさ!
そうだ!散歩に出かけよう。
そう、思い立ち、支度し始めながら、
2人の詩人の詩を思い出した。
お伴に詩集は持っていこう!
cofeeもポットに入れて…。
いそいそ、としちゃう。
アレ?以外と忙しい?
散歩
ただ歩く。手に何ももたない。急がない。
気に入った曲り角がきたら、
すっと曲がる。曲り角を曲ると、
道のさきの風景がくるりと変わる。
くねくねとつづいてゆく細い道もあれば、
おもいがけない下り坂で膝がわらいだす
こともある。広い道にでると、
空が遠くからゆっくりと
こちらにひろがってくる。
どの道も、一つ一つの道が、
それぞれにちがう。
街にかくされた、みえないあみだ籤の
折り目をするするとひろげてゆくように、
曲り角をいくつも曲がって、
どこかへゆくためにでなく、
歩くことをたのしむために街を歩く。
とても簡単なことだ。
とても簡単なようなのだが、
そうだろうか。
どこかへ何かをしにゆくことはできても、
歩くことをたのしむために歩くこと。
それがなかなかにできない。
この世でいちばん難しいのは、
いちばん簡単なこと。
長田弘詩集『深呼吸の必要』より
旅する術(すべ)
目あてもなしにさすらうことは
青春のよろこびだ。
だがそのよろこびも青春と共に
私から遠のいた。
それ以来目的と意志とが自覚されるや、
私はすぐさまその場を去った。
ただ目的だけを追いかけている眼には
さすらいの滋味はわからない。
あらゆる途上で待ちかまえている
森も流れもすべての美観も
閉ざされたままだ。
これからは私もさすらう仕方を
学ばなければならない、
瞬間の無垢なかがやきが
あこがれの星の前でも薄れないように。
旅する術はすなわちこうだ。
世界の輪舞に加わって
共に身を隠し、
休息の時でもなお愛する遠方への
途上にあること。
ヘルマンヘッセ詩集